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ジキルとハイド Robert Louis Stevenson

ドアにまつわる話

アターソン氏は弁護士で、いかつい顔をしており、ついぞ笑った顔を見せたことがなかった。話すときも冷たい感じで、言葉少なめにもごもごと話すといった具合だった。背が高くやせており、そっけないものうげな男だったが、どこか憎めないところがあった。内輪の会合で、ワインを口にしたときなどは、隠し切れない人間味がその目からうかがえたものだ。こうした感じは、話しぶりからは決してうかがえないのだが、夕食後の顔に声には出ないものとして見出せるだけでなく、日常生活の行動の端々にしばしばうかがえるのだった。節度のある男で、一人のときは高いワインを控えてジンを飲むくらいだったし、芝居好きにもかかわらず、劇場の門をくぐったことは20年もないほどだった。しかしみなも認めるように、他人には寛大だった。人が不始末をしでかしてひどく意気消沈していると、ときどきうらやましいとばかりに驚き、本当に困っているときには非難するどころか助けてやるのだった。

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船中八策 坂本竜馬


一、天下の政権を朝廷に奉還せしめ、政令宜しく朝廷より出づべき事。
一、上下議政局を設け、議員を置きて万機を参賛せしめ、万機宜しく公議に決すべき事。
一、有材の公卿・諸侯及(および)天下の人材を顧問に備へ、官爵を賜ひ、宜しく従来有名無実の官を除くべき事。
一、外国の交際広く公議を採り、新(あらた)に至当の規約を立つべき事。
一、古来の律令を折衷し、新に無窮の大典を撰定すべき事。
一、海軍宜しく拡張すべき事。
一、御親兵を置き、帝都を守衛せしむべき事。
一、金銀物貨宜しく外国と平均の法を設くべき事。
 以上八策は、方今天下の形勢を察し、之を宇内(うだい)万国に徴するに、之を捨てて他に済時の急務あるべし。苟(いやしく)も此数策を断行せば、皇運を挽回し、国勢を拡張し、万国と並立するも亦敢て難(かた)しとせず。伏(ふし)て願(ねがは)くは公明正大の道理に基(もとづ)き、一大英断を以て天下と更始一新せん。



底本:「日本の思想 20 幕末思想集」筑摩書房
   1969(昭和44)年7月5日初版第1刷発行
   1975(昭和50)年4月15日初版第4刷発行
底本の親本:「坂本竜馬関係文書」
入力:志田火路司
校正:土屋隆
2004年11月6日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

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クサンチス XANTHIS アルベエル・サマン Albert Samain 森林太郎訳

 飾棚だの飾箱だのといふものがある。貴重な材木や硝子ガラスを使つて細工がしてある。その小さい中へ色々な物が逃げ込んで、そこを隠れにしてゐる。その中から枯れ萎びた物のが立ち昇る。過ぎ去つた時代の、人を動かす埃がその上に浮かんでゐる。昔の人のした奢侈の、上品な、うらかなしい心がそこから啓示けいしせられるのである。


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土佐日記 紀貫之

男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。それの年(承平四年)のしはすの二十日あまり一日の、戌の時に門出す。そのよしいさゝかものにかきつく。ある人縣の四年五年はてゝ例のことゞも皆しをへて、解由など取りて住むたちより出でゝ船に乘るべき所へわたる。かれこれ知る知らぬおくりす。年ごろよく具しつる人々(共イ)なむわかれ難く思ひてその日頻にとかくしつゝのゝしるうちに夜更けぬ。
廿二日(にイ有)、和泉の國までとたひらかにねがひたつ。藤原の言實船路なれど馬の餞す。上中下ながら醉ひ過ぎていと怪しくしほ海のほとりにてあざれあへり。
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世界怪談名作集 幻の人力車 キップリング Rudyard Kipling 岡本綺堂訳

       一




悪夢よ、私の安息を乱さないでくれ。

闇の力よ、私を悩まさないでくれ。


 印度という国が英国よりも優越している二、三の点のうちで、非常に顔が広くなるということも、その一つである。いやしくも男子である以上、印度のある地方に五年間公務に就いていれば、直接または間接に二、三百人の印度人の文官と、十一、二の中隊や連隊全部の人たちと、いろいろの在野人士の千五百人ぐらいには知られるし、さらに十年間のうちには彼の顔は二倍以上の人たちに知られ、二十年ごろになると印度帝国内の英国人のほとんど全部を知るか、あるいは少なくとも彼らについてなんらかを知るようになり、そうして、どこへ行ってもホテル代を払わずに旅行が出来るようになるであろう。

 款待かんたいを受けることを当然と心得ている世界漫遊者も、わたしの記憶しているだけでは、だいぶ遠慮がちになってきてはいるが、それでも今日こんにちなお、諸君が知識階級に属していて、礼儀を知らない無頼ぶらいの徒でないかぎりは、すべての家庭は諸君のために門戸をひらいて、非常に親切に面倒を見てくれるのである。

 今から約十五年ほど前に、カマルザのリッケットという男がクマーオンのポルダー家に滞在したことがあったが、ほんの二晩ばかり厄介になるつもりでいたところ、リューマチ性の熱がもとで六週間もポルダー邸を混乱させ、ポルダーの仕事を中止させ、ポルダーの寝室でほとんど死ぬほどに苦しんだ。ポルダーはまるでリッケットの奴隷にでもなったように尽力してやった上に、今もって毎年リッケットの子供たちに贈り物や玩具おもちゃの箱を送っている。そんなことはどこでもみな同様である。諸君に対して、お前は能なしの驢馬ろばだという考えを、別に隠そうともしないようなあけっ放しの男や、諸君の性格を傷つけたり、諸君の細君の娯楽を思い違いするような女は、かえって諸君が病気にかかったり、または非常な心配事に出逢ったりする場合には、骨身を惜しまずに尽くしてくれるものである。

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卑怯者 有島武郎

 青黄ろく澄み渡った夕空の地平近い所に、一つ浮いた旗雲には、入り日の桃色が静かに照りえていた。山の手町の秋のはじめ。

 ひた急ぎに急ぐ彼には、往来を飛びまわる子供たちの群れが小うるさかった。夕餉ゆうげ前のわずかな時間を惜しんで、釣瓶落つるべおとしに暮れてゆく日ざしの下を、彼らはわめきたてる蝙蝠こうもりの群れのように、ひらひらと通行人にかけかまいなく飛びちがえていた。まともに突っかかって来る勢いをはずすために、彼は急に歩行をとどめねばならなかったので、幾度も思わず上体を前に泳がせた。子供は、よけてもらったのを感じもしない風で、彼の方には見向きもせず、追って来る子供にばかり気を取られながら、彼の足許から遠ざかって行った。そのことごとく利己的な、自分よがりなわがままな仕打ちが、その時の彼にはことさら憎々しく思えた。彼はこうしたやんちゃ者の渦巻うずまきの間を、言葉どおりに縫うように歩きながら、しきりに急いだ。

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ヴォイニッチの手稿

【関連】X51.ORG1912年、イタリアはローマにほど近いモンドラゴーネ寺院にて、アメリカの古書収集家ウィルフリード・ヴォイニッチ氏は一冊の奇妙な手稿を見つけた。手稿は膨大で230ページ以上からなり、しかし、中に描かれた文字群はこれまで見た事もない不思議な文字が使われ、また未知の植物や裸婦などの幻想的な挿絵が描かれていた。ヴォイニッチ氏はほとんど直感的にその手稿の持つ潜在的価値に魅せられ、すぐさまそれを買い取り、本国へと持ち帰ることにした。ヴォイニッチ氏はその後の研究で、手稿の特徴から中世の錬金術師か、植物学者が書き上げたものと推測したが、その奇怪な文字群は一切の解読を拒否し、彼の頭を悩ませた。

【関連】X51.ORG誰も知らない場所で、誰も知らない時に、誰も知らない文字で書かれた書物を想像してみて欲しい。ここに誰も知らない日付で、誰も知らない場所で、誰にも知られない文字で書かれた一冊の書物がある。これは決して空想の書ではない。「ヴォイニッチ手稿(VionichManuscript)」と呼ばれる中世のいつかに何者かによって書かれたこの謎の書物は、これまで長年に渡って科学者や歴史家達を悩ませてきたのである。

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貴重資料 | 17:46 | 読書感想(0) | トラックバック(0) | 最初の頁へ

NIPPON シーボルト


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貴重資料 | 20:10 | 読書感想(0) | トラックバック(0) | 最初の頁へ

解剖室 三島霜川

 これ、解剖學者に取ツては、一箇神聖なる物體である、今日解剖臺に据ゑられて、所謂(いはゆる)學術研究の材となる屍體は、美しい少女(をとめ)の夫(それ)であツた。此樣なことといふものは、妙に疾(はや)く夫から夫へとパツとするものだ、其(それ)と聞いて、此の解剖を見る級(クラス)の生徒の全(すべて)は、何んといふことは無く若い血を躍らせた。一ツは好奇心に誘(つ)られて、「美しい少女」といふことが強く彼等の心に響いたのだ。中には「萬歳」を叫ぶ剽輕者(へうきんもの)もあツて、大騷である。
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カーライル博物館 夏目漱石


 公園の片隅に通りがかりの人を相手に演説をしている者がある。向うから来た釜形かまがたとがった帽子をずいて古ぼけた外套がいとう猫背ねこぜに着たじいさんがそこへ歩みをとどめて演説者を見る。演説者はぴたりと演説をやめてつかつかとこの村夫子そんぷうしのたたずめる前に出て来る。二人の視線がひたと行き当る。演説者は濁りたる田舎調子いなかぢょうしにて御前はカーライルじゃないかと問う。いかにもわしはカーライルじゃと村夫子が答える。チェルシーの哲人セージと人が言囃いいはやすのは御前の事かと問う。なるほど世間ではわしの事をチェルシーの哲人セージと云うようじゃ。セージと云うは鳥の名だに、人間のセージとは珍らしいなと演説者はからからと笑う。村夫子はなるほど猫も杓子しゃくしも同じ人間じゃのにことさらに哲人セージなどと異名いみょうをつけるのは、あれは鳥じゃと渾名あだなすると同じようなものだのう。人間はやはり当り前の人間でかりそうなものだのに。と答えてこれもからからと笑う。

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文づかひ 森鴎外

 それがしの宮の催したまひし星(ほし)が岡(おか)茶寮(さりょう)の独逸会(ドイツかい)に、洋行がへりの将校次を逐(お)うて身の上ばなしせし時のことなりしが、こよひはおん身が物語聞くべきはずなり、殿下も待兼(まちか)ねておはすればと促されて、まだ大尉(たいい)になりてほどもあらじと見ゆる小林といふ少年士官、口に啣(くわ)へし巻烟草(まきタバコ)取りて火鉢(ひばち)の中へ灰振り落して語りは始めぬ。
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最後の一句 森鴎外

 元文(げんぶん)三年十一月二十三日の事である。大阪(おおさか)で、船乗り業桂屋太郎兵衛(かつらやたろべえ)というものを、木津川口(きづがわぐち)で三日間さらした上、斬罪(ざんざい)に処すると、高札(こうさつ)に書いて立てられた。市中至る所太郎兵衛のうわさばかりしている中に、それを最も痛切に感ぜなくてはならぬ太郎兵衛の家族は、南組(みなみぐみ)堀江橋際(ほりえばしぎわ)の家で、もう丸二年ほど、ほとんど全く世間との交通を絶って暮らしているのである。
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2006年03月 | ARCHIVE-SELECT | 2006年05月

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